進化は優勢な個体だけが勝つのではなく、一定の弱い個体も生き残った。

今から20年以上前、重度知的障害者の娘が小学生低学年のころ、新聞の一面広告に大腸菌の実験の成果が、優勢な個体だけが生き残るのではなく、培養を繰り返すと一定数の弱い個体が生き残る結果を持って、大腸菌も「共生」が生き残りの強みになっている事を知りました。生命体は「共生」のほうが「生き残る」これは大きな希望になり、私の「信念」を補強し、何十年もたっても忘れられない大きな事件でした。その研究がどのように進んでいるのか再び調べてみました。


我々の運命を左右するのは個体の能力差ではなく、周囲との相性だった

実験室で「進化」をつくる 四方 哲也 氏
意外にも、我々の運命を左右するのは個体の能力差ではなく、周囲との相性だったのです。

「実験的分子進化を通しての適者生存と多様化の可塑性」という研究で、生物の多様性が生れるメカニズム、いわゆる進化実験をテーマで、「ズッカーカンドル賞」を受賞されました。

どのような研究かといいますと、

大腸菌の中の、グルタミン酸をグルタミンに変換する酵素をつくる遺伝子だけに突然変異を起こさせて、さまざまなレベルの変異種をつくり、勝ち残りをかけて生存を競わせたのです

同じ大腸菌同士なら、同じ餌を食べるので競争が激しくなります。そうしたような理由から、大腸菌のグルタミン合成能力にだけ差をつけて、勝ち残りゲームをしたのです。実験科学で多様性を説明したければ、最も多様性が起こりにくい、このような状況で実験をして証明するしかないと思われたそうです。

進化論でいう「自然淘汰」の論理でいけば、たくさんのグルタミンをつくることができる大腸菌が増殖していく。その一方で、その能力の低いものは減少し、いずれ滅んでいくはずが何度繰り返しても、能力の高い種だけが残ることはなかったのです。もちろん滅んでしまった種もいましたが、それも必ずしも能力が低かったからとはいえません。

というのも、滅んだ種を取っておいて、しばらく経った後に培養槽に戻してみました。時間が経っていますから培養槽の中は、その種が滅んだ時よりも随分進化が進んでいます。理屈では、すでに途中で滅んでしまったものは、より進化した個体のいる環境で生き残れるはずがありません。しかし面白いことに、種によっては、復活し、競争しながら共存することもあるそうです。

 

人間に当てはめてみれば、優秀な人ばかり集めても、常に全員が優秀だということはあり得ないわけです。誰かが優秀であれば、必ずさぼる人も出てくる、逆にさぼっている人を見て、優秀な人はますます頑張る、なんていう相互関係も出てくるのではないでしょうか。また、逆に考えれば、多様な状況では新たな相互関係も生れてくるでしょうし。

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眠れる遺伝子進化論

内容紹介
「適者生存・自然淘汰」の固定観念を覆す複雑系の生き残り戦略
私たちはどこから来て、どこへ行くのか。ダーウィン進化諭をひっくり返し、人間の生き方・社会のあり方に知の変革をもたらす「競争的共存説」の衝撃。

生物が影響し合うと、遺伝的に決まっていない性質が複雑に変化して、増殖速度が変化する。このような複雑な相互作用のもとでは、相手が決まらないと自分の性質が決まらないし、単純に上がり続ける適応度のような値もない。だから、単純な適者生存は成り立たず、いくつかの変異種は競争的共存になり、多様性を作り出す。そして、さらに突然変異が重なると、生物は最適化せず、進化は永遠に続くのだ。

目次

まえがき シェークスピアになったサル
第1章 進化論は多くの誤解を与えている
第2章 人間は良くできた生物か
第3章 適者生存説は本当に正しいか
第4章 ちょうどよい適者が生き残る?
第5章 偶然によって生き残る?
第6章 競争的共存説
第7章 相互作用が多様性をもたらす
第8章 不愉快な共存
第9章 進化メカニズムを考え直す
終章 生命はこれからどう進化するか
短いエピローグ がんばるべきか、がんばらざるべきか